先日思いつきでPowerBookG3 Wallstreetを入手して、古き良き時代を楽しんでいますが、せっかくクラッシックな環境を手に入れたので、ゲームだけでなく他にもいろいろ遊んでみようと、現在のMacの仮想環境内でレガシーなOSを走らせてみることにしました。オールドMacのエミュレーターは幾つか存在しているのですが、今回は「SheepShaver」というエミュレーターを使ってみます。

オールドMacのエミュレーターには、他にも「Basilisk II」という古いエミュレーターが存在するのですが、なんと驚いたことにSheepShaverは現在も開発が進行中です!

Wikipediaによれば、SheepShaverは1998年に初めてリリースされたときは商用ソフトウェアだったようですが、BeOSのメーカーであるBe社の消滅後、2002年にオープンソースとなったようです。BeOS懐かしいなぁ。

SheepShaverはオランダのアムステルダム在住のRonald P. Regensburgさん(日本語だとロナルト・P・レーゲンスブルクと表記したらいいのでしょうか?)という方が中心となって開発を継続しているらしいです。いまだに開発を続けてるとか凄いですね。…というわけで、早速インストールしてみたいと思います!

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目次

  1. 必要なもの
  2. インストール方法
  3. インストール後すぐにやっておきたい設定
  4. まとめ

1.必要なもの

必要なものは下記の通りです。

  • Mac OSのインストールCD(Mac OS 8.5 or 8.6 or 9.0.4のパッケージ版)
  • CD-ROMドライブ搭載のオールドMac(Mac OS ROM入手のため)
  • Mac OS ROM
  • SheepShaver (ver. 2.5)

本来、SheepShaverは漢字Talk 7.5.3〜Mac OS 9.0.4に対応しているのですが、なぜ必要なインストールCDに括弧書きで「Mac OS 8.5 or 8.6 or 9.0.4のパッケージ版」としてあるかというと、後述する「Mac OS ROM」の入手がしやすいからです。というわけで、Mac OSのインストールCDはMac OS 8.5 or 8.6 or 9.0.4のパッケージ版を用意しましょう。

とっくの昔に手放して手元にないとしても、これらはまだヤフオクなどのオークションか、下記バナーのリンク先のような中古ショップ等で入手可能なようです。

次に「Mac OS ROM」について少し説明を加えておきたいと思います。このMac OS ROMですが、68kや初代PowerPCの頃までは、マザーボード上のROMソケットに入っていた(Old World ROMと呼ばれている)のですが、初代iMacからシステムフォルダ内に移された経緯がある(New World ROMと呼ばれている)のです。そのようなわけで、Mac OS 8.5 or 8.6 or 9.0.4のインストールCDがあれば、そのシステムフォルダ内からMac OS ROMをコピーするだけで、簡単に入手できるのです。

ちなみに、Mac OS ROMの入手方法は他にもあります。それは「TomeViewer」という旧環境のフリーソフトを使って「Mac OS ROM Update 1.0」から吸い出すやり方です。

※「Mac OS ROM Update 1.0」は元々Appleから提供されていたものですが、現在ではAppleからの配布は終了しているようです。しかしミラーサイトからなら現在でも入手はできるようです。Googleで検索してみてください。

Mac OS ROMは必ず自分が所有する実機から入手しよう!

実は68kや初代PowerPC時代のROMが入手できるサイトは海外にはあるらしいのですが、そのような入手方法はライセンス的に問題があると思います。不正なROMの入手は絶対にやめましょう。合法的に気持ちよく正々堂々とエミュレータで遊び倒しましょう!

Mac OS ROMの入手方法 その1:Mac OS 8.5、8.6、9.0.4のインストールCDからコピーする方法

では、Mac OS 8.5のインストールCDを実機に挿入して、システムフォルダ内を覗いてみることにしましょう。

インストールCDをCDドライブに挿入して、CDのシステムフォルダを開いてみると…

この「Mac OS ROM」を何らかの方法で、現在のMacにコピーします。現在のmacOSとのAppleTalkを使ったファイル共有は不可能なので、一番手っ取り早い方法は旧OS側の「Web共有」を使ったやり方だと思います。「Mac OS ROM」をDropStuff等のフリーソフトを使って圧縮して、現在のMacからブラウザ経由でダウンロードします。「Web共有」のやり方について、ここでは省かせてもらいますが、検索してもらえれば手順を理解してもらえると思います。

Mac OS ROMの入手方法 その2:TomeViewerを使った取り出し方

「TomeViewer」を使った入手方法については詳細を省きたいと思いますが、下記のブログ記事で詳細に解説されていました。実際に自分でも取り出してみましたが、うまくいきましたよ。

TomeViewerよる「Mac OS ROM」の抽出方法:
http://kakonacl.xsrv.jp/~kakonacl/douga/sheepshaver/sheepshaver.html

Mac OS ROMの入手が完了したら、今度はMac OSのインストールCDをイメージファイルにします。SheepShaverからCDを参照するには、イメージファイル化する必要があるのです。

ディスクユーティリティを起動して、インストールCDを挿入すると、デスクトップにマウントはしませんが、ディスクユーティリティ上では認識するので、それを選択した状態で、「ファイル > 新規イメージ > Mac OS ***** からイメージ作成」を選択します。

次いで、ファイル名はそのままか任意のものとした上で「フォーマット」を「DVD/CDマスター」にし「暗号化」は「なし」に設定してから「保存」をクリックします。

イメージ作成には少々時間がかかりますが、数分で完了するはずです。作成が完了すると「*****.cdr」という拡張子付きのイメージファイルが保存されますが、この拡張子を「.iso」に変更しておきます。

インストールCDのイメージ化が完了したら、最後に「SheepShaver」をダウンロードします。下記からダウンロードしてください。

SheepShaver builds for Mac OS X, links and downloads

ダウンロードはアプリケーション本体以外に「folder.zip」が必要となります。上記のピンク枠で囲った二つのデータが必要となります。

対応OSについて(2023.8.3追記)

Intel版MacかつMonterey以前のOSがインストールされているマシーンでは、「sheepshaver_notarized_20200315.zip(SheepShaver 2.5)」がお薦めです。当方では以下の環境で動作を確認しています。

  • High Sierra 10.13.6(Intel)
  • Mojave 10.14.6(Intel)
  • Catalina 10.15.6(Intel)
  • BigSur 11.1(Intel, M1)
  • Monterey 12.2.1(Intel, M1)

なお、Apple Silicon版Macで、OSが現時点で最新のVenturaの場合は、「SheepShaver_universal_20230713.zip(SheepShaver 2.5.2022.09.13)」がお薦めです。こちらのバージョンは前述のダウンロードサイトでApple Silicon、Intel両方に対応するコンバーチブル版として紹介されており、当方でも動作確認しましたが、問題なく動作しました。

  • Ventura 13.5(M1)

ご注意:なお、Ventureの場合ですが、インストール時に操作が必要な設定画面が開けないことがあるようです。自分の環境ではなぜか開けませんでした。その場合は設定ファイルを手動で用意すれば起動できます。後述しますので、事項の「2.インストール方法」の後半を参照してください。

2.インストール方法

SheepShaverの各zipファイルをダウンロードしたら解凍してください。解凍したらSheepShaverのフォルダの中にSheepShaver本体を移動しておきます。

またそのフォルダ内に、先ほど用意したインストールCDのイメージファイル、Mac OS ROMも移動しておきます。

最後に、SheepShaverフォルダを「アプリケーション」フォルダに移動させておきます。このような状態になっているはずです。

これでインストール完了です。SheepShaverを起動してみましょう。最初の起動では、フロッピーディスクの中心に?が点滅する状態の画面が表示されるはずです。これ懐かしいですね。

この画面を確認したら、メニューバーの「SheepShaver > Preferences」を選択してください。

次いで、その画面の「Add…」をクリックして先ほどイメージ化したインストールCDを追加します。また「Create…」をクリックして仮想ハードディスクを作成しておいてください。「RAM Size」はお好みで適当なサイズに調整しておきましょう。

「ROM File:」ですが、SheepShaverと同じディレクトリの場合、ファイル名が「Mac OS ROM」である限り自動で認識するはずですが、他のディレクトリにある場合や、理由があってファイル名を変える場合は、ここでディレクトリを指定します。

「Unix Root:」ですが、ここに特定のディレクトリを指定しておくと、そのディレクトリが「Unix」という外付けディスクのように扱われ、デスクトップにマウントされます。これを設定しておくと、ファイル共有するのにとても便利なので、是非設定しておきましょう。

これでようやくレガシーなOSを起動できる状態となりました。次に再起動する必要があるのですが、なぜかSheepShaverをQuitできません。しょうがないので、Dock上のSheepShaverアイコンをOptionキー + 右クリックして、強制終了します。

Venturaで設定画面が開けない場合の対処法(2023.8.3追記)

Ventureでは設定画面が「SheepShaver > Preferences」ではなく「SheepShaver > Settings…」に変更されています。こちらが開けない場合は「テキストエディット」で「sheepshaver_prefs」というファイル名のテキストを「/Users/******/sheepshaver_prefs」のように、ご自身のホームディレクトリ直下に作成してください。そして、以下のテキストをそのファイルにコピー&ペーストして、修正が必要な部分をお好みで設定します。

cdrom /Applications/SheepShaver/CD-ROM/Mac OS 8.5.iso
disk /Applications/SheepShaver/Macintosh HD.dsk
cdrom /dev/poll/cdrom
extfs /
screen win/1024/768
windowmodes 0
screenmodes 0
seriala 
serialb /dev/null
rom /Applications/SheepShaver/Mac OS ROM
bootdrive 0
bootdriver 0
ramsize 134217728
frameskip 8
gfxaccel true
nocdrom false
nonet false
nosound false
nogui false
noclipconversion false
ignoresegv false
ignoreillegal false
jit true
jit68k false
keyboardtype 5
hardcursor false
hotkey 0
scale_nearest false
scale_integer false
cpuclock 0
yearofs 0
dayofs 0
ether 
keycodes true
keycodefile /Applications/SheepShaver/keycodes
mousewheelmode 1
mousewheellines 3
dsp /dev/dsp
mixer /dev/mixer
ignoresegv false
idlewait true

重要な設定は以下のとおりです。

  • 1行目:インストールディスクのパス(1行目が起動ディスクになる)
  • 2行目:仮想ハードディスクのパス
  • 4行目:スクリーン解像度
  • 9行目:Mac OS ROMのパス
  • 12行目:メモリサイズ(1048576 * メモリ搭載数で設定)

重要な設定は以上です。あとはお好みで設定してみてください。ちなみに、ハードディスクやCD-ROMを追加したい場合は「disk」や「cdrom」の設定を単純に増やせばOKです。このやり方で複数のハードディスクやCD-ROMをマウントできます。ちなみに1行目が起動ディスクになるため、OSのインストールが終わったら1行目と2行目は入れ替える必要がある点を覚えておいてください。

設定画面から新しい仮想ハードディスクを作成できない方のために容量1GBの未フォーマット仮想ハードディスクを用意しました。よろしければ以下をダウンロードして解凍してお使いください。解凍後「Macintosh HD.dsk」が現れますので「SheepShaver」フォルダの直下にファイルを移動してお使いください。

容量1GBの未フォーマット仮想ハードディスク
macintosh-hd-1gb.dsk.zip

※上記の「容量1GBの未フォーマット仮想ハードディスク」は中身は当然空ですので、インストールディスクで起動したあとフォーマットしてお使いください。なお、上記のダウンロードデータは約1MBですが、解凍すると1GBの仮想ディスクに変わります。

sheepshaver_prefs」を上書き保存したら、そのファイルを不可視ファイルにしなければなりません。そのやり方ですが、ホームディレクトリのウィンドウがアクティブな状態でキーボードの「⌘ + Shift + .」を同時押します。これで不可視ファイルが見える状態になります。次いで、ファイル名を「sheepshaver_prefs」から「.sheepshaver_prefs」に変更しておいてください。最後にもう一度「⌘ + Shift + .」を同時押しして不可視ファイルを見えない状態にします。

さて、改めてSheepShaverを起動してみましょう。

おー起動しましたね!笑顔のMac OSの画面!

仮想ハードディスクが初期化されていないので、名称を決めてフォーマットします。

無事インストールCDから起動できました。

あとは、インストールCDの指示にしたがってインスールするのみです。

3.インストール後すぐにやっておきたい設定

インストール後すぐにやっておきたい設定を幾つか。

3-1.クラッシュ対策

今回インストールしたのは、Mac OS 8.5なのですが、インストール直後は「Mac OS 設定アシスタント」が自動で起動するようになっています。しかし、なぜかSheepShaverとの相性が非常に悪いようで、しばらく画面を開いて操作しているだけで、急に操作を受け付けなくなることが多発しました。そして、その都度、強制終了…。

Mac OS 8.5以外のOSでも同様の現象が発生するのか確認はしてませんが、ひとまず起動時に毎回「Mac OS 設定アシスタント」が起動しないよう、システムフォルダの「起動項目」からこのエイリアスを削除しておいた方が無難だと思います。

3-2.サウンド設定

Mac OS 8.5及び8.6で同様の現象が発生するようですが、コントロールパネル内にデフォルトでインストールされている「モニタ&サウンド」のサウンド側に問題があるようで、なぜかビープを含めたサウンドが一切鳴りません。以下の方法で解決します。

  • 「Macintosh HD / Apple エクストラ / サウンドコントロールパネル / サウンド」をコントロールパネル内に移動。
  • 「Macintosh HD / Apple エクストラ / モニタエクストラフォルダ / モニタ」をコントロールパネル内に移動。
  • 「Macintosh HD / コントロールパネル / モニタ&サウンド」をコントロールパネル外にバックアップ

移動とバックアップが完了したら「Macintosh HD / コントロールパネル / サウンド」を開いて「サウンド出力」で「内蔵スピーカ」を選択し閉じてから、再起動するとサウンドが鳴るようになります。

3-3.ネットワーク設定

基本的にスタンドアロンとして使用するにしても、インターネットや自宅LANに繋げてある状態だと何かと便利です。以下の設定でネットワークが参照できるようになります。

「SheepShaver > Preferences」を選択して「Miscellaneous」タブをクリック。一番下の「Ethernet Interface」に「slirp」と入力。その後「Save and Quit」をクリックして再起動します。

ちなみに「Slirp」とは、Linux系では古くからあるネットワーク関連の仮想化プログラムのことで、ダイアルアップの時代のSLIP接続とのやりとりをソケットに見せかけるためのプログラムのようです。

この設定を行うと、LANだけでなくインターネットも開けるようになりますが、古いブラウザでインターネットを閲覧することには注意も必要です。まず最近当たり前となったSSLのサイト(「https://」で始まるURL)は、暗号プロトコルが異なるため、古いブラウザでは開くことすらできません。HTML5で書かれたサイトもCSSが読み込まれない可能性があります。加えて、様々な脆弱性の問題もありますので、インターネットの閲覧には注意してください。

3-4.キーボード設定

SheepShaverフォルダの中にキーワードマッピングに関する「keycodes」という設定ファイルあるのですが、これがデフォルトのままだとどうしても押せないキーが出てきてしまうようです。例えば、かなの「へ」と書いてある「^(ハット)」と「~(チルダ)」を入力するキーなどです。それで「keycodes」の設定ファイルに多少細工をする必要が出てきます。

まずは「keycodes」のバックアップをとってから、テキストエディタで開き357行目以降の「cocoa (SDL2)」のマッピング設定のみとして他の設定は削除しておきます。修正したファイルは「keycodes.cocoa」などとして保存しておきます。

今度は「SheepShaver > Preferences」を選択して「Miscellaneous」タブ内にある「Use Raw Keycodes:」のチェックを入れて、改変した「keycodes.cocoa」の方を選択しておきます。こうすることで現在のMacとのキーマッピングがより似た状態になります。

しかし、それでもなお、現在のMacのJISキーボード配列と完全に一致するわけではないので、あとは好みで各自「keycodes.cocoa」を改変してやってください。

修正のやり方ですが、1列目の数字には触れずに、2列目と3列目をカットして、入れ替えします。タブと半角スペースをごちゃ混ぜにしないよう注意しながら作業してください。

下記は修正例です。

修正前:
409行目:47 33 # [
410行目:48 30 # ]
431行目:49 42 # \

修正後:
409行目:47 39 # ‘
410行目:48 33 # [
431行目:49 30 # ]

これで「`(バッククォート)」「[](大カッコ)」の位置が正しくなります。…とはいえ、Shiftキーを押した場合との組み合わせまで一致させるような完全な変更はできないので、気にならなければこの修正は不要かと思います。

参考記事:
SheepShaver:Mac OS8.6 コントロールパネルの微調整とQuickTime
羊用バリカンの使い方/SheepShaver

4.まとめ

クラシック環境が廃止されたのが2003年。既に20年が経過しているわけですが、現在のMacで古いOSの仮想環境が使えるなんて本当に楽しいですよね!特に、いつ壊れるか分からないオールドMacの環境を仮想環境としてずっと残しておきたい、と言う方にはピッタリではないでしょうか。

その他の実用上の用途は…正直ほぼないかもしれませんが(笑)少なくとも、古くからのMacファンなら懐かしさのあまり感激してしまうかもしれませんね。

とにかく、開発を継続してくれているRonald P. Regensburgさんに感謝ですし、今後のバージョンアップにもぜひ期待したところです!!

ちなみに、SheepShaverはラズパイでも動かすことができますが、こちらの「Raspberry Piにエミュレータとして有名なSheepShaverをインストールして、古いMac OSを動かす方法」という記事もあります。興味のある方は是非ご覧ください!